少年野球と学業を両立させるためには

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記事の目次

これは、あるチームで本当にあった話です。
A君は4年生の春、某少年野球チームに入団してその野球人生を楽しくスタートしました。
そして翌年の秋、先輩である6年生達は卒団し、いよいよ5年生であるA君の代が最高学年となりました。
今まで6年生の陰に隠れてレギュラーになれず、悔しい思いでずっと待ちわびていたA君とお母さんは、新チームでの未来予想図に夢を膨らませていました。

ところが、2学期の終業式を迎えた日、事態は一変します。
A君の持ち帰った5段階評価の通知表は、体育を除く殆どの教科の欄に“2”という数字が並んでいました。
5年の1学期までは通知表の上で“2”などという数字は一度も見たことがなかったのに。
5年生の夏休み、野球に対して本格的に目覚め、突如、毎晩自主練習と称して庭で素振りや壁あてを真剣に始めていたA君にとって、宿題は二の次となり提出物を忘却の彼方へと置き去った結果がこの有様でした。

政治家の父をもつA君には、有名私立中学への入学が宿命付けられており、この凄まじい成績下落は、家庭崩壊にも繋がりかねない大事件でした。
「大体お前が野球なんかやらせたからだ。」議員である父親の怒りの矛先は母親に向きました。
その結果、母親は3学期からA君に家庭教師をはり付けました。
そして3学期末の通知表で元通り“2”がなくなれば野球を続けてよい…という約束を交わした母子でしたが、一度狂った生活習慣と、忘れてしまった勉強に向き合う姿勢はそう簡単に戻らず、あんなに楽しみにしていたレギュラーでの公式戦出場を果たすことなくA君はチームを去りました。

練習を取るか塾やお稽古を取るか

少子高齢化の昨今、一人っ子の割合も高く、親の期待も過度に高まる傾向があるのは周知の事実です。
さらに、親は勉強に対してだけでなく、スポーツや音楽に対しても英才的なアプローチをしたがっています。
そんな状況の中においては、「野球の練習日と、子どもの塾やお稽古の日程が重なる」ことは避けられないと多くのチームの指導者は思っています。

私のチームでは、「勉強しない子には野球はやらせない」と常々ミーティングで話しており、学期末には練習グランドに通知表を持ってこさせます。
なぜなら、「子ども達の本業である学業を疎かにする子には野球をやる資格がない」というチーム方針のもと、定期的に子どもたちの成績をウォッチしているからです。
学校の宿題や提出物をやってこないということは、チームで野球を通して私が課した課題や指示を無視することと繋がります。
まして、ボランティアである野球チームの課題が義務教育の宿題より重いはずもなく、親御さんの気持ちも勘案すれば「勉強しない子には野球はやらせない」となるわけです。
よって、わがチームでは、塾や模擬試験などで練習を休む場合は、事前に指導者に申し出ていれば無条件でOKとしています。
但し休まず練習に出てくる子の手前もあるので、休んだ子は試合に出しません。これは“見せしめ”というよりも必然の流れです。

野球というのは、“チームワーク”が重要です。
これは特に“守備での連係プレー”を考えた時、誰か一人レギュラーが欠けただけでも、ずたずたに崩壊するような代物です。
だから練習を休む子は、連携プレーの対象から外さないとチームプレー練習が成り立たず、その結果、練習を休む子は、代打や代走でしか試合にも出られなくなるというわけです。
キャプテンだろうが中心選手だろうが、“練習を休んだら試合には出さない”という、この掟は守らないとチームは破綻します。

まとめ

私も小学生時代、地元で少年野球チームに所属していました。しかし4年生の途中で辞めました。
平日にピアノ教室と英会話教室に通っていただけでなく、日曜日に終日進学教室に行くように親から言われ、幼い私も同意したからです。
その頃の私は、野球も好きでしたが勉強もピアノも好きでした。

しかし、今にして思うと、あの頃もっと野球をやっていればよかったと真剣に思います。
“少年野球”は、どう逆立ちしても大人になってからではできない事を悟ったからです。
少年野球の監督を長年やってみた今、小学生高学年の時点で味わう勝利の喜び、敗北の悔しさというものが、必ずやその後の人格形成に役立つと思えるからです。

うちの長男は、野球にのめりこんでいたので、小中学校時代にほとんど塾にも行きませんでしたが、高校は文武両道で知られる野球強豪校に“勉強の特待生(月謝タダ)”で進み、野球と学業との両立で奮闘しながら、甲子園に出てヒットを打ちました。
子供の可能性というのは、計り知れないのです。

こんな経緯もあり、私は、野球を優先する家庭の気持ち、塾やお稽古事を優先する家庭の気持ち、両立しようとする家庭の気持ち、どれもわかるのです。
少年野球と学業を両立することは、た易いことではありません。
しかし“可能性を広げる”努力をすることは非常に重要です。
親としての負担は圧倒的に増えると思いますが、“両立”によって広がる“子供の可能性”に賭けてみる価値は充分あると思います。

入団して学業との両立で迷ったら一人で悩まずに、まずチームの監督に相談してみてください。

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