キャッチャーの捕球とスローイングの練習方法

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記事の目次

キャッチャーは、本当につらいポジションです。

相撲や剣道で言う蹲踞(そんきょ)の姿勢でピッチャーの球を受けますが、その恰好で試合の半分ほどを過ごさなければなりません。そして、ファウルボールや暴投が身体に当たることもしばしばあります。その防御策として、キャッチャー用ヘルメット、キャッチャーマスク、プロテクター、レガースといった多くの特殊な防具をつけて練習や試合をするので、肉体的にいつもへとへとです。

また、いくらチームに良いピッチャーがいても、キャッチャーがポロポロやっていては三振が取れませんし、打たれれば配球が悪いと責められる事もあります。そして盗塁を刺殺できないキャッチャーは試合で好き放題に走られて、ほとんど晒し者状態になるので精神的にも相当追い込まれます

そんな肉体的・精神的に厳しい中、キャッチャーは守備の中で「扇の要」と呼ばれるのですから、相当の覚悟をもって練習に臨む必要があります。小学生レベルで「盗塁をビシビシ刺す」ことは厳しいので、まずはきちんとしたキャッチングとスローイングを身につけることが必要です。

構え方について

キャッチングは基本が大事です。基本ができていないと、どこかで必ず痛い目に遭います。まずは「構え方」からです。

最近の小学生は和式トイレの経験が乏しく、蹲踞すら出来ない子が多いことで世間の監督は皆困っています。正確には和式トイレの「ウンチングスタイル」が出来たとしても、それはキャッチャーとしては「ダメな姿勢」です。お尻が下がりすぎている為、送球の際にワンテンポ遅れることになるからです。そこで「ウンチングスタイル」の姿勢から「キャッチャー座り」へ進むステップとして、私のチームでは定型化している練習があります。

まず、キャッチャー候補生の子供に蹲踞の姿勢でバットの太いほうを持たせます。そしてコーチがバットの細いほうを持って引っ張りながらグラウンドを一周するのです。“トンボ”を使って、グランド整備をする感じです。子供は“腰を上げず片方ずつ足を進める”練習を積み重ねることで、「キャッチャー座り」を自分のものにできるという寸法です。

また、キャッチャーの構え方を論ずる時、「膝をついてよいか?」ということもよくテーマになります。

ランナーがいない場合は、普通に「キャッチャー座り」で構えても、片方の膝をついてもどちらでも良く、まずは本人が「捕りやすい体勢」であるということが重要です。「膝を付くのは怠慢プレーだ!」という人もいますが、あくまでも捕りやすさを優先してください。

また、キャッチングの難しいところは、ただ捕れば良いだけではなく、「捕りにくい体勢」で捕ったりすると主審に「ボール判定」をされてしまうことです。その他、捕球後にミットを動かすことも、主審によっては逆効果の場合がありますので注意が必要です。(ストライクなのにキャッチャーがミットを動かしたことで、心象を悪くしてボールと判定される)

一方ランナーがいる場合は、盗塁やバント処理を警戒する必要があるので、素早いフットワークが必要になります。よって、ランナーがいる時は両膝共に地面についてはいけません

足の位置としては「左足の方を右足よりも一足分ほど前」にして構えるのが一般的です。この方が捕った後に送球体勢に入りやすいからです。そしてその時には、重心を右かかとに乗せるのではなく「足全体の内側中心部分に重心を置く」気持ちで構えます。

その他、キャッチャーミットを構える基本は、「人差し指を真上の12時の方向」に向けてミットを構えます。「ミットを立てて構えろ」と指導者がよく言うのは、まさしくこのことです。そして人差し指を真上にして立てて構えれば、ミットは自然と横の形に向く様にできているので、実際にやってみるといいでしょう。

捕球について

ボールを捕る時には「自分からボールを追いに行かない」ことがまず重要です。自分が一番ミットを動かしやすい腕の位置でボールを待ち受けます。そして自然な形で「外側から内側」へ捕りに行くように意識して、極力ミットの芯(ポケット部分の中心)で補球するということも忘れてはいけません。

芯で捕球した時の音と、芯を外して捕球した時の音の違いは歴然です。この“捕球音”の意識は、主審が“ボール”と判定する球を極力少なくするために行う半ば「印象操作」ですが、レベルの高い野球になればなるほどその重要性が問われます。

そして、捕る瞬間に外側から内側へキャッチングして、捕球後はミットを止めます。捕った後にミットを動かすと、前述のとおりこれも審判の印象が悪くなります。

また、ワンバウンド投球の時以外、ミットを下からは出してはいけません(ミットのポケット位置を上向きにしない)。こういう捕り方をしたキャッチャーがいて、私が主審であれば“ボール”にします。

右手の位置は、ファウルチップの打球で怪我しない様に、体の後ろ(腰の真ん中辺り)へ隠します。

しかし、ランナーが一塁にいる時には、右腕は左ヒザの上に置くのがプロでは主流になっています。その理由は「スローイングが格段に速くなる」からです。(小学生はランナーがいても、右手は体の後ろでよい)

キャッチングの指導で私が最も重視していることは、いかにして投球を“後逸しないか”ということです。後逸しないで胸に当てて前に落としさえすれば、走者は進塁を自重する可能性が高いですし、3塁ランナーは間違いなく突っ込んで来られません

そのためにはワンバウンドや横にそれた投球に対して、“体を持っていく”という練習を繰り返ししなければなりません。慣れない小学生は、とかくミットだけで捕りに行くので、ワンバウンドなどに対応できず後逸してしまうので要注意です。

スローイングについて

少年野球でランナーがでたら、監督がまず考える作戦は盗塁です。

相手ピッチャーの牽制とキャッチャーの肩(2塁送球)を考慮して、今出塁している走者のスピードで2塁に盗塁可能かどうかを判断します。この判断の中で最も重要な要素は、キャッチャーの肩です。送球のスピードは勿論ですが、正確に2塁・3塁の上に投げられるコントロールはそれ以上に大事です

そして、正確にスローイングする上で最も重要な要素は“ステップ”です。キャッチャーの2塁送球時のステップは

  1. 左膝を2塁の方向へ向ける。
  2. その反動で右足を2塁方向へ垂直になるように小さく一歩前へ素早く踏み出す。
  3. 左足を2塁方向へ正確にステップして送球する。

という三点セットの動きで構成されています。

強いチームのキャッチャーはこの三点セットを反復練習して、ゆるぎないステップを身につけます。

注意しなければならないのは、2塁送球は距離もある上、ランナーとのスピード勝負になってしまうので、どうしてもきちんとしたステップが崩れがちだということです。

また正しいステップで投げる癖がついていないと、地肩の力だけで投げることになり、故障にもつながります。実際、小中学生の肩肘の故障といえばまずピッチャーですが、その次に多いのがキャッチャーなのです。

きちんとしたステップをしっかりと教えることで肩の負担を減らす」ということが、指導者のキャッチャーに対する指導方針として非常に重要です。

まとめ

繰り返しになりますが、キャッチャーはつらいです。

でも逆になり手が少ないので、競争相手は少ないでしょう。これは経験者が少ないということに繋がるので、高校野球など上のステップに行けば行くほど、ベンチ入りやレギュラー争いで有利になるともいえます。

但し、肉体的にも精神的にも過酷で、さらにやるべき練習やサインなど、“覚えるべきこと”もかなり多いので、根っから野球が好きな子でなければ勤まらないと思います。

「あなたキャッチャーでもやってみたら」と気軽にお子さんに言えるほど簡単なポジションではないことを、ここでは押さえておいてください。

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