チームの先輩後輩の関係について
スポーツの世界で先輩後輩の上下関係と言うのは非常に重要な意味を持ちますが、少年野球チームにおいてもそれは例外ではありません。
小学生における1歳の違いと言うのは、皆さんの想像よりも大きなものです。
体格的な成長も著しいこの時期ですが、日々の精神的な成長にも目を見張るものがあります。それでは5年生と6年生の関係を例としてお話ししましょう。
言葉づかい
いかに小学生とはいえ、上下関係の礼儀として先輩の呼び方には敬意を込めるようにこの時期から指導します。具体的には“XX君”ときちんと君付けで呼ばせるようにします。“XX”と呼びつけにしたり、幼稚園児のように“XXちゃん”と呼んだり、あだ名で呼んだりするのはご法度です。なぜなら、XX先輩は野球の技術や礼儀、もっといえば世の中を教えてくださる先生のような存在なのです。なかには“しくじり先生”もいるかもしれません。しかし、失敗する先輩の生き様、振る舞いを見ることもまた大切な勉強なのです。
おさがり
先輩後輩の話をするうえで忘れてはならないのは、“おさがり”の話です。この時期の野球においては、練習着やスパイクなどの身に付けるものだけでなく、グローブやバットなどの野球用具も、体格が成長することによって大きなものに買い替える必要が生じます。その時、汗の染み込んだ道具たちが、先輩から後輩へと引き渡されていきます。そしてきちんと手入れされた道具たちは、数年後、さらに別な後輩へとまた渡されていくのです。
学校生活
先輩後輩の関係が密な野球チームの子供たちが通う小学校での生活には、バラ色の道が敷かれています。昨今問題となっている“いじめ”に遭う可能性が恐ろしく低い、という事実です。
これは中学校においてもいえることですが、いじめっ子たちはスポーツのチームに属する子供たちを標的にしません。下手に手を出して、上級生である先輩が仕返しに乗り込んで来たら厄介なことになるということが分かっているからです。
“いじめ”に関してむしろ問題なのは、野球をやっている子が、やっていない子を“いじめ”ることです。私は監督としてのネットワークを駆使して、自チームの子が学校でいじめを働いていないかを調査します。もし仮に見つけた場合は、本人を呼んで話をします。いじめられた子の気持ちがどんなものか。自分がその立場になったらどんな気持ちがするか。チームでも誰かをいじめているのではないか。そういう子を監督は許さないので、試合には出さない。という容赦ない説教ですが、この時期に根本的な考え方を指導しておかないと、中学生になってからでは手遅れです。このように、野球チームの監督は生活指導の側面も併せ持つ場面も多く、気苦労が絶えないのです。
まとめ
先輩後輩の関係というのは、子どもたちの将来を考えると、中学→高校→大学と続くだけでなく、社会人になっても続きます。そして、仕事をリタイアした後の、例えば町会活動の中などでも続きます。
先輩は、一生先輩なのです。どうあがいても一生頭が上がらないのです。
小学生のこの時期に、先輩後輩という人間関係を徹底的に叩き込むことは、また我々指導者に課された使命でもあるのです。