怪我をした場合の指導者の対処

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記事の目次

野球に怪我はつき物です。それは、プロ野球でも高校野球でも少年野球でも変わりません。ここでは、子供が練習中や試合中に怪我をした場合における指導者としての対処を、症状別に説明します。

練習中や試合中に起きる怪我の種類

新人お父さんコーチの貴方。チームでは年間かなりの日数を練習に費やしますが、明日は監督がお休みで、指導者も貴方をはじめ1年生コーチばかりです。得てして、そういう日に限って事故は起きるものなので、予め対処法を確認しておきましょう。

練習中や試合中に起きる怪我で、特に数が多いのは“熱中症”と“鼻血などの出血”と“脳しんとう”です。

熱中症

夏場に高温の状況下で練習をしていると、体温の調節ができなくなり、意識が朦朧としてきます。これが熱中症です。中でも、直射日光によって発症したものを、特に日射病と言います。

熱中症は、ニュース等で報道されているように、最悪の場合、死亡に至る事もある恐ろしい疾患なので、指導者として適切な判断と対処が必要です。熱中症対策として最も重要なことは、“予防としてこまめに水分や休息を取らせる”ということです。

猛暑の日は、水筒のスポーツドリンクやジャグの水分はすぐになくなります。お茶当番のお母さんと連携して、適当なタイミングで休憩/水分補給の時間をとるようにしてください。

熱中症の症状としては、“汗が出なくなる”“体温の急上昇を起こす”“意識を失う”などで、子供にこうした状況が起きた場合、できるだけ迅速に涼しい場所へ移動させます。そして、練習着のボタンやベルトを外し、首/わきの下/足の付け根などにアイシングをします。

この時、まだ意識がない状態であれば、無理やり水を飲ませてはいけません。意識が回復したら、スポーツドリンクや水などを“ちょっとずつ”なるべく大量に飲ませます。

もししばらく意識が回復しなかったり、体温が異状に高い場合には、すぐに救急車を呼びます。そして、仮に意識が戻ったとしても、この日は練習に参加させてはダメです。保護者に連絡を取り、練習後は必ず病院に行かせましょう。

鼻血などの出血

怪我で出血した場合、止血や消毒をするのはあたりまえの処置です。簡単なようですが、ここで重要なのは、“やるべき事”と“やってはいけない事”をしっかり把握した上で対処する事です。

すり傷を消毒する場合、傷口は水で洗い流すことにとどめ、間違っても擦ったりしてはいけません。石や砂など、なにか異物が傷口に入りこんでいた場合、大きいものならそのまま、小さいものは新たな出血に注意して取り除きます。

そして、チーム備え付けの薬箱から液体状の消毒薬を探し、ガーゼに含ませて患部に当て、包帯を巻きます。この時、軟膏を塗るのは、傷がふさがらなくなるので絶対にダメです。また、ちり紙や脱脂綿をそのまま当てるのも、衛生上ダメです。

止血するには、患部に消毒ガーゼを強く当て、心臓よりも高くもち上げることが基本です。それでも止まらない場合は、傷口より心臓に近い、脈が計れる部分をしばらく押さえます。そして、血が止まったことを確認したら、包帯を多少きつめに巻きます。この時、手足の先の部分が冷たくなったり、色が白くなってきた時は“巻き方が強すぎる”ということなので、包帯をやや弱めに巻きなおしてください。

鼻血の場合は、初動が重要です。まず椅子などに座って背を伸ばし、頭を垂直にします。よく“鼻血は上を向かせろ”と言う人を見かけますが、これは大間違いで、血を飲んでしまうのでダメです。

また、首の後ろをトントン叩く年配者がいますが、これも刺激になるので逆効果です。止血に際しては鼻に紙を詰め、小鼻を押さえます。それでも止まらない場合には、アイシングの道具などで鼻を冷やします。出血が収まっても、30分程度はじっとしていましょう。

脳しんとう

複数の野手が“声かけ”を怠ったばかりに正面衝突したり、打者がデッドボールを頭に受けたりして、一時的に気を失うのが脳しんとうです。

2分以内に意識が戻ればまず心配ありませんが、万が一2分経っても意識が戻らない場合、または戻っても意識に障害がある場合には、躊躇せずに救急車を呼びましょう。また、2分以内に意識が戻っても頭痛や吐き気などの症状がみられる場合は、医者に診てもらいましょう。

脳しんとうの処置としては、まず倒れた場所から絶対に動かさず仰向けに寝かせ、アイシングの道具などで頭部を冷やします。もし嘔吐が見られる場合は体を横にして、嘔吐物がのどに詰まらない様にします。

意識を調べるため、声をかけたり手足をつねったりします。ここで注意すべきことは、“決してゆすらない”ということです。意識が戻っても、30分以上はそのまま休ませるようにしましょう。

そして少しでも迷ったら、躊躇せずに救急車を呼びましょう。“首から上の事故”の場合、“備え在れば憂いなし”の心構えが、何よりも大事です。

その他

打撲/突き指/捻挫/骨折などがありますが、これらは練習中に起きることよりも、学校で休み時間に発症することのほうが圧倒的に多いのが実情です。

仮に練習中にこれらの疑いが生じた場合は、まず近所の整形外科に行かせましょう。監督や古株のお母さんに聞けば、“チーム御用達”の病院を紹介してくれるはずです。(この作業を怠ると“やぶ医者”にぶつかる確率が高まり酷い目に遭う…ともいえます。)

その他、各チームは“スポーツ保険”に加入している(はず)ということを押さえておいてください。

“スポーツ保険”は種類によって多少違いはありますが、私のチームが加入している保険を例にお話しすると、団体での活動中やその目的の為の往復中にケガを負い、通院程度の軽傷であった場合、一日あたり1,500円が支払われます。また、入院治療が必要な場合は、一日あたり4,000円が支払われます。さらに重篤なケガで後遺症が残ってしまった場合には、最高で3,000万円が支払われます。最悪、死亡した場合には、2,000万円が支払われます。

“ケガなんてしないで欲しい”というのは当然ですが、スポーツをやる以上ある意味避けられません。そんな中、1人あたり年間800円程度でこのような補償が受けられるというのは、通常の保険商品と比較した場合、かなりお得といえるでしょう。

まとめ

私のチームでは、幸いなことに、死亡事故や野球生命を断たれるような大事故は起きていません。但し、これは単に“運が良かっただけ”だと思っています。

かつて、3年生が思いきり振ったバットが、隣にいた子の頭を直撃したことがありました。 たまたま隣にいた子はヘルメットをかぶっていたので事なきを得ましたが、“もし無防備の頭だったら…”と考えると今でもぞっとします。

この例でもわかるように、練習中に最も危険な行為は、“周りを見ずにバットを振り回す”ことです。そしてこれは、特に危機意識がまだ低い4年生以下のチビッ子が要注意です。

従って、指導者が“ここで素振りしなさい”といった場所以外でぶんぶんバットを振り回している子を見つけたら、その時点で強く叱る必要があります。“バットが当たった子は、野球ができない身体になってしまうんだぞ”

コーチが“振っていい”といった場所以外でバットを振ることが“なぜ”ダメかを子ども自身に理解させて、大怪我や事故の発生リスクを少しでも下げましょう。みんなで楽しい少年野球ライフを過ごせるように…。

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