少年野球における合宿の目的
チームスポーツにおいて、スタッフや所属メンバーにある程度の長期休暇が見込める場合、「合宿」を行います。
その「合宿」は、行き先や期間だけでなく、開催目的もチームによって異なります。
また、少年野球における合宿は、他のスポーツの合宿や高校以降の野球合宿とは一線を画す部分があるので、詳しく説明していきましょう。
合宿は本当に参加するのが当たり前なのか
「合宿はチームの行事だから、参加するのがあたりまえだ。」
小学生の保護者はそう思っている人が多いようです。
ところが、実際にはそんな低い意識で合宿に参加しても、思うような成果・効果は得られません。
「なぜ合宿を行うのか?」を、まずしっかりと押さえておかなければなりません。
通常練習を中止してまで実施する合宿には、バス代・宿泊費・球場使用料などかなりの費用がかかります。旅行会社の“野球合宿パック”などは、やはりマージンが大きく総費用が高くつくことと、練習試合の相手までは探してくれないということもあり、私のチームでは毎年自力で企画から取り組みます。
宿やバス会社の選定、行程の決定をするのは非常に厄介です。また、行程の合間で合宿先の強豪と練習試合を組むために、多方面との調整が必要です。また、何日間も朝から晩まで子供と接する必要がある監督・指導者の労力たるや、計り知れません。まして移動するだけでかなりの時間がかかるので、「その時間を地元で練習した方が効率的なのではないか?」という意見もちらほら聞こえてきたりします。
そこまでして合宿を開催する価値は、どこにあるのでしょうか?
一般的な合宿の目的
チームが合宿を行う上での一般的な目的と言えば
- 技術力の向上
- 精神力の向上
- チームの団結力を強める
といったところでしょうか。
- 卒団の思い出作り
- 大きな大会前の調整
というイレギュラーな目的も、時にはあるでしょう。
また、少年野球を“人間教育の場”として捉えている監督(チーム)は
- 生活力やコミュニケーション力向上
を掲げたりもします。確かに合宿においては、時間厳守・挨拶など礼儀作法の再徹底、一同で食事することにより食物の好き嫌いの確認(一掃)などの効果も見込めます。
変わったところでは
- 同行した保護者同士の親睦
というのもあります。「合宿の夜が楽しみ」という親御さんが結構いるのも事実ですが、度を過ぎると何のための合宿か、それこそわからなくなってしまいます。
環境を変える
人生において、環境が変わる様々なイベントがあります。進学・就職・結婚・引越しなどがこれにあたります。
その時々で、かつて私たちは「ヤル気が起きた」ことを覚えていますか?
人間というのは、新たな環境を目の前にすると「ヤル気が起きる」のです。子供たちだって、その感性は同じです。
我がチームでは、そこを狙って合宿を行います。
いつものグランドで、いつものように粛々と行われる日常の練習において、子供達本人は頑張っているつもりでも、どこかでマンネリ化し、気づかないうちに「努力する」ことを忘れてしまっているのです。全てにメリハリが利かなくなっているのです。
我々監督・指導者がいくら口をすっぱく指導しても、受け取る子供たちの意識が変革しなければ、それは結果として現れてきません。
そこで“合宿”という秘密兵器ともいえるイベントを使い、環境を変えることで、子供たちの「努力する気持ち」と「ヤル気」をまとめて喚起するのです。
周りとの違いで自分を見つめなおす
合宿におけるもう一つの大きな狙いは、子供たち一人ひとりが、集団生活において「自分を見つめなおす」ということです。
一緒に練習するチームメートでも、野球以外で生活を共にすることは滅多にないはずです。
食事面では、好き嫌い、食べる量、食べる早さなど、子供たちそれぞれに違いがあります。ご飯、おかず、味噌汁を順番に食べることができず、一皿ずつカラにしないと次に進めない子もいます。
また、自分では沢山食べているつもりでも、実は周りのみんなと比べたら逆に少ない方かもしれません。これに気づかないと、結果的にこの差の積み重ねが、体力面で大きな差になる場合が多く、結局、野球を辞めるまでこの差に気付かない場合すらあります。
他にも、風呂の入り方や荷物の整理整頓、寝相の悪さや寝息など、普段の何気ない行動を他人との比較の中で見つめなおすことが出来ます。
合宿中の生活において、自分と他人との違いを肌で感じる事で、野球以外で自分に足りない部分がぼんやりと見えてくるのです。
周りとの違いで子供を見つめなおす
合宿は、子供たちだけに経験をさせる場ではありません。
子供たちを観ている我々指導者側が、子供たちの「変化」や「生活」を感じ取る場にもなります。そして、その中に指導のヒントが隠されていることがあります。
A君の体力がないのは、走りこみが不足しているからではなく、物理的に食べる量が少なくて走れないのかもしれません。
ピッチャーのB君は、打ち込まれると切り替えが出来ずに、いつもメタメタになってしまうのは、もしかしたら、普段から整理整頓するクセがないからなのかもしれません。
合宿は、そうした指導者サイドの「気付き」の場でもあるのです。
まとめ
合宿を終えて、指導者も子供たちも多くのことに「気付き」ました。
さて、その次はからどうしましょうか?
合宿は、その良いキッカケを与えてくれたのです。
時間を割き、お金と労力を費やし、合宿所という「特別な環境」で生活することによって忘れかけていた「ヤル気を起こし」、普段の練習では決して気づかない様々なヒントを享受する、というのが「合宿」の真の狙いなのです。
合宿から帰ってきたお子さんを、よく観察してみましょう。
なにかやたらとご飯を沢山食べ、食べ方自体も変わってきたことに気づきませんか?
合宿から帰ってきたお子さんと話をしてみましょう。
なにかやたらと頼もしくなって帰ってきたと感じませんか?
実は、親御さんの「気付き」も合宿の狙いなのですよ。