野球中に器物を破損してしまった場合の保険や賠償責任は?
「ホームランボールがグランドに隣接する民家のガラスを割った」「ホームランボールが走行中の車を直撃してボンネットがへこんだ」など、少年野球でもまれに物損事故が起きます。
ガラス1枚の弁償で済めばまだいいですが、何度も同様の被害に遭うと、被害者が民事訴訟等に訴えるというような例もあり、非常に厄介です。
スポーツ保険
小学生の場合、入学直後に各学校で“スポーツ保険”への加入を求められると思います。但し、これは登下校及び学校で生活している時間帯しか適用されないので、各単位団でも同様の“スポーツ保険”に全員加入しているはずです。
“試合中に他のチームの選手に怪我をさせてしまった”“送迎や片づけの途中で何らかの事故を起こしてしまった”ということも、年に何度か発生します。そんな時、“スポーツ保険”に加入していると、その保険料から保険金が支払われるので、安心してプレーすることができます。(当然、適用外の場合もあります。)
通常、“スポーツ少年団”所属のチームであれば、スポーツ安全協会のスポーツ保険に加入しています。
ここは文科省や体育協会が支援している協会なので、年間800円程度というとても安価な掛け金で保険に加入できます。毎年掛け捨ての保険ではありますが、状況に応じた金額が適宜支給されます。
大抵の少年野球チームは、既にどこかのスポーツ保険に加入しているはずなのでチームで確認してみましょう。
賠償責任
物損事故の場合、“賠償責任”という言葉がキーワードとなります。この責任があるか/ないかで、保険金がおりるかどうかが決まります。
スポーツ保険には、自分や他人がケガをした場合に使える“傷害保険”と、物損事故の際に使える“賠償責任保険”としての側面があります。
例えば、“送迎における自動車運転中の事故”は賠償責任保険の対象とならないので注意してください。その一方で、被保険者自身のケガは傷害保険の対象となります。
また、スポーツ保険の場合、「被害者側だって多少のケガや物損は想定していたハズだろう」「スポーツ中の出来事なんだから、不可抗力じゃないのか」という考え方がベースにあるため、“賠償責任なし”と判断されることがよくあります。
保険金支払額
では、保険金として支払われる金額は、どうやって決まるのでしょうか。もし、“賠償責任あり”と判断された場合でも、物を壊した側が全額負担するというケースはめったにありません。
スポーツ保険の場合、自動車保険等と同様に、被害者との責任割合を勘案した上で金額が決定します。なぜなら“スポーツをしている時の物損事故は、加害者側の一方的な過失とは考えられない”とみなされるのが一般的だからです。
ただそうなると、「示談したほうが穏便に治まるんじゃないか?」と思うかもしれませんが、その場合、示談交渉は当人同士で行うことになるので大変な労力が必要になります。また、基本的に保険会社は示談の仲介はしないことになっているので、期待してはいけません。
交通事故の仲介に保険会社が入れるようになったのもつい最近のことだということを考えれば、スポーツ保険の分野でそれを求めるのはまだ無理ということです。(因みに、これでも筆者は一応法学部を卒業しております。)
賠償責任がないと判断される物損事故
それでは、スポーツ保険で“賠償責任なし“と判断される物損事故とは、一体どのようなケースでしょうか。
例えば、“サードゴロを1塁に投げたが、1塁の手前でイレギュラーバウンドして、一塁手の子のメガネを破損させてしまった”場合や、“自分が打ったピッチャーライナーが余りに強烈でピッチャーのグローブを壊してしまった”ような場合は、ルール違反を犯したわけではないので、法的な賠償責任はありません。
どちらも野球のルールを守った上で、競技中に不可抗力で起こってしまった物損事故なので、“避けられなかった事故”として処理され、保険適用外となります。(但し、これが、ルールを破って対戦相手に体当たりしてメガネを割ったとか…であれば、当然、賠償の責任が発生し、スポーツ保険は適用できません。)
まとめ
かつて、私のチームにおける練習中、中学生がフリーバッティングで場外ホームランを打ちました。そしてその打球が、グランド外を走るベンツに運悪くぶつかったことがありました。
幸いボンネットの傷が小さかったことと、運転手の方のお子さんが中学生で、しかも野球少年だったということで“お詫び”で済みましたが、世の中はあんな奇特な人ばかりではありません。
あのベンツの持ち主が、もし“タチの悪い暴力団関係者だったら”と考えると、今でもぞっとします。この事件以来、そのグランドにおける中学部のフリーバッティングは、チームの内規で禁止にしています。
“備え在れば憂いなし”ということでスポーツ保険に加入することは必然です。加えて、“器物破損のリスクがない練習方法を恒常的に考える”ということが、少年野球チームとして避けられない課題となっている現状を、ここでは押さえておいてください。