甲子園に出場する確率を上げるためには
私は少年野球チームの監督ですが、3人の男子の父親でもあります。 子供が野球を始めた日から、当然のように「息子が甲子園に出場できたらなぁ」と淡い夢として持ち続けていましたが、なんと長男が春のセンバツに出場を果たしてしまいました。
しかも、彼は野球ではなく勉強の特待生として高校に入学したにもかかわらず、学業と猛練習を両立させて見事に甲子園の土を踏みました。
“目指せ!甲子園!”は、全国全ての高校球児が発する単なる合言葉であり、はっきり言って現実に行ける場所だと全く思っていなかった私は、その時の想いとして“夢は抱くものではなく、掴み取るものだ”とも強く感じました。残念ながら、その甲子園では1回戦でサヨナラ負けを喫してしまいましたが、3塁側アルプススタンドからレフトを守る息子に向かって思いっきり声援できたことは、今でも私にとってかけがえのない思い出となっています。
この我が家の例は特殊なのであまり参考になりませんが、甲子園に出場するためにはどのような具体的アプローチをすればいいのか考えてみましょう。
相手校が少ない都道府県を選んで確率的に狙う
一人の選手が高校時代に出場可能である5回の甲子園に全て出場した、桑田・清原・荒木大輔のようなスーパースターは別格として、普通の選手は、“21世紀枠”などの推薦を別とすれば、基本的に各都道府県の高校でこつこつと勝ち上がらなければ甲子園には出場できません。
ということは、確率論でいけば、“相手校が少ない都道府県の高校に進むことが、甲子園にたどり着くためには一番の近道”ということになります。 現実に、競争相手の多い神奈川・愛知・大阪あたりの高校だと200校近い中から8回くらい勝ち上がらなければなりませんが、鳥取・福井・徳島・高知辺りに行けば、敵は30校程度というのが実情です。シードされて4回くらい勝てばもう甲子園行きの切符獲得なのです。
これでは、他県への野球留学にも着目せざるを得ません。
野球留学を狙う
ここで皆さんは“甲子園に出る為だけにわざわざ他県の高校に行くのか?”と思うかもしれませんが、ひと昔前から野球留学は当たり前です。
1980年代の倉吉北(鳥取)あたりからこの流れは始まり、あのマー君や坂本は大阪から北海道や青森に留学していました。ダルビッシュも宮城の高校に進みました。最近では岩手辺りの強豪校も、神奈川からの留学生を沢山抱えています。
みな大阪や神奈川では甲子園に出場できる確率が低いと認識していることが良く解ると思います。現在では『週刊朝日増刊号』を見ると甲子園出場選手全員の出身中学が掲載されているので、野球留学の蔓延が一目瞭然だと思います。
強い学校に進学する
2017年のセンバツ決勝(大阪桐蔭VS履正社)を見ても明らかなように、現状大阪の実力は全国でも飛びぬけています。
両校共にスカウティングには定評があり、特に大阪桐蔭の西谷監督が中学時代から広島で有名だった中田翔を訪ねて、50回ほど足しげく新幹線で通った話は有名です。
ただ、息子さんが仮に両校に入学できたとしても、レギュラーとして名を連ねたり、ベンチ入りしたりする事が至難の業であることは容易に想像がつきます。
野球特待で進学する
大阪や神奈川では一般入試でしか強豪校に進学できない場合が多く、地方なら特待(入学金、学費免除などの特典あり)で入学できる学校が多く存在するので、経費的なこともその一因で、大阪や神奈川から地方へ優秀な人材が流出しています。私のチームからも、地方の強豪校に野球特待で何人も野球留学しています。
学費の心配をせず、ごみごみした都会ではなく、地方の良い環境でのびのびと野球をやらせたいと言う親御さんの気持ちもわかりますが、特待制度のある高校は基本的にどこもハイレベルなので、スタメンはおろかベンチ入りするのも相当難しいということは押さえておいてください。
卒業後も相談に乗ってくれる高校を選ぶ
少年野球の監督と言う立場上、卒団後に甲子園を狙える強豪校に進学したものの、怪我などにより挫折した選手を何人も見てきています。これは、“保険”的な考え方ですが、できれば、その後(卒業後、又は挫折後)の進学先・就職先までも親身になって相談に乗ってくれる温かい監督のいる学校がいいでしょう。
あくまで私見ですが、鳥取で野球留学の制度がある鳥取城北と、卒業後の進路まで面倒見てくれるという馬淵監督の高知・明徳義塾を、甲子園への近道である高校としてここではお勧めしておきます。
まとめ
現在、東京や北海道は夏の全国大会に2校出場できますが、それでも鳥取の5倍以上の対戦相手と戦っています。
個人的には、このような“格差”を“是正”する処置を何らかの形でとる必要があると感じています。2012年夏に香川県代表で出場した香川西はメンバー18人が全員他県出身で、隣接する四国出身もゼロなのに香川県代表になったことで大問題になりました。
“自分の息子を甲子園に出場させたい”という気持ちは、誰でも同じです。その為には野球留学もやむなしかもしれません。しかし、まずは“格差是正”に向けて高野連が早く手を打たないと、何のための都道府県代表かわからない“夢の甲子園”になってしまいそうです。