振り逃げが発生するタイミングとスコアの付け方
“振り逃げ”という言葉は、野球規則のどこにも書かれていません。
これはあくまで俗称なので、高校野球やプロ野球の中継などでも、“いわゆる「振り逃げ」”とアナウンサーは表現します。
振らないのに振り逃げ?
- 三振でキャッチャーが捕球できなかった場合に振り逃げができる
スタンドで子供の試合を応援しているお母さんたちから、よく質問されます。
“監督。バッターが振っていないのに、なんで振り逃げなんですか?”
振っていなくても成立するから、アナウンサーは“いわゆる「振り逃げ」”というのです。
「見逃し三振」の状態で、キャッチャーがこの投球を完全捕球できなかった場合も「振り逃げ」ができる状態となります。
この時、バッターはバットを振らなくても一塁に向かって進塁してよいのです。
つまり、“バッターがバットを振ったかどうか”は、「振り逃げ」に全く関係ないのです。
さっきは振り逃げだったのに?
- 一塁にランナーがいる場合は振り逃げができない
スタンドで子供の試合を応援しているお母さんたちから、これもよく質問されます。
“監督。こんどはバッターが振ったのに、なんで振り逃げじゃないんですか?”
ワンアウト満塁でバッターが空振り三振をし、キャッチャーが前にこぼしているのを見て、お母さんたちが騒ぎ出します。
これを“振り逃げ”対象にすると、キャッチャーは故意に落球してホームを踏んだ後、ファーストに送球すればダブルプレーが成立してしまいます。
野球のルールは“インフィールドフライ”もそうですが、“わざと落としてダブルプレーやトリプルプレーを狙う”というようなアンフェアーなプレーができないように、様々なルールをはりめぐらされているのです。
今度は振り逃げなの?
- ツーアウトの場合は一塁にランナーがいても振り逃げができる
スタンドで子供の試合を応援しているお母さんたちから、これもよく質問されます。
“監督。さっきは振り逃げじゃなかったのに、今度は振り逃げなんですか?もうわけがわかりません!”
ツーアウト満塁でバッターが三振してキャッチャーが前にこぼしているのを見て、お母さんたちが騒ぎ出します。
ツーアウトの場合は“わざと落としてダブルプレーを狙う”事は物理的にできないので、バッターは振り逃げを試みることができます。
この例の場合、キャッチャーは慌てずにホームベースを踏むか、1塁に投げてバッター走者をフォースアウトにする必要があります。
振り逃げにおける主審の動作は?
そして結局“振り逃げ”をよく理解できなかったお母さんたちから、こう尋ねられます。
“監督。結局審判がどんな動きやコールをしたら振り逃げなんですか?”
この質問に対する答えとしては、「審判は何もしない」が正解です。
なぜなら、審判はいかなる場面でも、その置かれている“状況”についてプレーヤーに指図することがあってはならないからです。
つまり、“振り逃げ”についても、発生要件をプレーヤー自身でしっかりと理解するしかないということなのです。
菅野の振り逃げ3ラン
今や、ジャイアンツのというより侍JAPANで不動のエース(WBC2017年度)と呼ばれている菅野ですが、東海大相模時代にバッターとして記録した“振り逃げ3ラン”はあまりにも有名です。
バッターがハーフスイングした際、キャッチャーが塁審へのスイング確認を球審に要請することがあります。
この時は、塁審が「スイング」を取ったためバッターは三振となりました。
その結果、ワンバウンドした変化球を空振りし2死であったために無条件でバッターは走者になっています。
この走者をアウトにする為には、打者走者または一塁ベースに触球する必要が有ります。
バッターであった菅野に対して、この基本的なプレーを怠った名将渡辺監督率いる横浜高校は、こうして屈辱の“3ラン振り逃げ”を喫しました。
詳しくはyoutubeに映像が上がっていますので、そちらをご覧ください。(“菅野 振り逃げ”で検索するとすぐ出てきます)
スコアブック上の振り逃げ表記
“振り逃げ”は記録上“三振”としてカウントされ、スコアブックに記載する時は、三振を表わす“K”を左右さかさまにして書きます。
スコアブック上にイニング別の三振数を書く欄などがある場合には、加算することを忘れないようにしてください。
まとめ
いわゆる「振り逃げ」が発生する要件として重要なことは以下の通りです。
- ツーアウトの場合は“振り逃げ”はない。
- ノーアウト、ワンアウトで1塁、1・2塁、満塁というダブルプレー(トリプルプレー)が可能な場合は“振り逃げ”がない。
- “振り逃げ”において、スイングしたか否かは関係ない。
理解できたでしょうか?
プロ野球においても、かつて“振り逃げ満塁ホームラン”というプレーがあったぐらいです。皆さんもきちんとルールを覚えましょう。