子供たちからの質問に対する指導者の心構え
監督/指導者として日々練習していると、毎日のように選手から質問を受けます。
少年野球チームにおける選手はみな小学生なので、解らないことがあるのは当たり前で、それを口に出して質問しようという行動は、褒められるべきものです。従って、非常に重要なこの時期の選手達からの質問に対して、監督/指導者サイドとしても丁寧な対応が求められます。
監督/指導者が選手から質問を受けた場合にまず注意すべき点は、以下の3点です。
- 正確に回答する。
- 迅速に回答する。
- いくら下らない質問でも誠実に回答する。
正確に回答する
自身がいくら忙しい場合でも、“曖昧な回答”や“間違った回答”をしてはいけません。子供たちが“指導者不信”に陥り、その後何を言っても信用してくれなくなる恐れがあるからです。中でも特に気をつけるべきは、野球のルールに関する質問です。この回答を間違えると、「なぁんだ、XXコーチもルール解ってないじゃん!」となってしまいます。
円滑なチーム運営を行う為には、時間がかかっても正確な回答をするように心がけてください。
迅速に回答する
世間一般に言うQ&A(企業などに対する質問と回答)での回答にも同じことがいえますが、子供たちからの質問に対する回答には、“スピード感”を求められるものが多くあります。
かつて私のチームで、なかなかレギュラーになれない控えメンバーのA君から「今度の日曜日の試合に、僕が試合に出るならおじいちゃんとおばあちゃんが観に来ると言ってるんですが、僕は出られますか?」と質問されました。
この質問に対して、いくら迅速に回答が必要だからといって、
「どうだろうな。日曜日の試合前に決めるよ。」ではA君が求める答えになっていません。
「試合には代打で出すから、今日のバッティング練習で頑張ってみようぜ。」とか「公式戦だからA君が出られるかどうかは試合展開によるな。“出られないかもしれないけど観に来て”って答えたらどうだい。」というのが丁寧で正確な回答です。
私の場合、“XX君のおじいちゃんとおばあちゃんが観に来る”という様な情報が耳に入れば、極力試合に出してあげようとまずは試みますが、これに味をしめて毎回おじいちゃんとおばあちゃんが観に来るようになった家庭もあるので、安易な回答には注意しましょう。
下らない質問でも誠実に回答する
「監督達はなんで練習のたびにお酒を呑みにいくんですか?」と、選手から聞かれたことがあります。これに対して「そんなこと俺の勝手だろ。」では会話になりません。大袈裟ではなく、それ以降、チームにおける子供達とのコミュニケーションが途切れてしまうかもしれません。
「監督は、毎回練習が終わったらコーチたちと反省会をしているんだ。チームが強くなるにはあと何が足りないか。チームひとりひとりをレベルアップさせるにはどうすればいいか。この話し合いには時間もかかるし、喉も乾くから少しはお酒も飲むさ。」という感じで私なら答えます。
大人が“下らない”と思う内容でも、子供達にとっては“絶対に聞きたい”内容であったりするのです。
質問の種類
一方、選手からの質問内容については、以下の2種類に大別されます。
- “なぜ”系質問:何かに対する“理由”“目的”を知りたい
- “どっち”系質問:何かに対する“判断”を仰ぎたい
質問の種類:“なぜ”系
これは、「ランナーが1塁や2塁に居る時には、なぜライト方向に打った方が良いのですか?」というような質問です。
“ランナーを次の塁に進塁させるためには、走塁の進行方向より後ろに打った方が進塁できる確率が上がるから”というのがその理由で、“だからライト方向に転がしてチャンスを広げる”というのがその目的です。
このように、“なぜ”に対する回答の際は、“理由”や“目的”を具体的に盛り込むことを忘れないようにしましょう。
質問の種類:“どっち”系
これは、「次のバッターは今日当たっていますが、敬遠しますか?」というような質問です。
練習や試合の中で、子供達が指導者に判断を仰ぐ場面はかなり多くあります。中でも、上記のような敬遠するか否かの場合は、勝敗に直結する可能性が極めて高いので、サインミスは許されません。そのため、監督はサインプレーではなく、マウンドに直接上がってバッテリーに対して最終判断を言い渡すことが多くなります。場合によっては、「勝負したいか?」とバッテリーに意見を求めることもありますが、この問いには殆どのバッテリーが「勝負したいです」と答えるので、聞いてもあまり意味がありません。「クサいところに投げてカウントが悪くなったら敬遠しろ。」というのは最もダメです。これは“判断になっていない”ばかりか、コースが甘くなって痛打されるシーンを何度見たかわからないくらいです。勝負を避けるのであれば、監督から明確に「敬遠しろ」と言い渡すことが重要です。
また、この“どっち”系タイプの質問の場合、気をつけなければいけないのは、子供が“自ら考えることを放棄”している場合や、判断を監督に委ねることで、“自分自身の責任を回避”しようとしている場合があるということです。それらを看過すると、“考えることを放棄する”“他人に依存する”“責任を転嫁する”ような人間に、子供達が育つことを助長してしまいます。
先ほどの例で、私がマウンドに上がり明確に「敬遠しろ」と指示したのに、「勝負させてください」とさらに食い下がってきたバッテリーがかつていました。彼らの熱意に免じて勝負させて、結果は打たれましたが最終的にその試合は勝ちました。
彼らは、我がチームで今まで教えてきた中で最高のバッテリーでした。
監督に逆らって自分達で選んだ判断の結果が仮に悪くても、そのミスを背負うことで反骨心を喚起し、最終的に勝利に結び付けられる。こういうチームは、間違いなく“強いチーム”といえるでしょう。
まとめ
監督/指導者として選手から毎日のように受ける質問は、確かに鬱陶しい時もあります。しかし、子供達からの質問が全くないチームというのもまた寂しいものです。
そうかと思えば、“保護者が聞きたいこと”について、子供を通して質問させてくる場合もあります。その場合は、鼻を利かせて保護者に回答するつもりで回答することも必要になります。
このように子供達からの質問は多種多様ですが、“練習や試合でよく質問してくる子供は、学校でもよく発言する”という傾向もあるので、“人間形成のステップ”として指導者も心して回答したいものです。